
ヤマトヌマエビは複数匹を水槽に入れていると、案外あっさり抱卵まではしてくれます。しかし…卵を孵化させても簡単には育てられません。ミナミヌマエビ等とは異なり、ヤマトヌマエビはいわゆる両側回遊性で生育に海水が必要だからですね。
昔から孵化・繁殖の成功報告や飼育方法を示したサイトはありますが、どの方も結構入念に準備して孵化に備えておられます。とはいえ、インフゾリアの準備など大変…(というか上手くいったためしがなかったり)。
という事で、事前準備などあまりせず人工海水と市販エサでの孵化~稚エビまでの生育に挑戦してみました。ポイントは…
- 急な温度変化をさせない
- 水換えをこまめに行う
- メイン水槽を活用する
準備
汽水環境が必要なので、メイン水槽とは別に道具類や消耗品の準備は必要です。今回使った物は以下の通り。
- 赤外線放射温度計(安い物で…)
- 人工海水の素(ホームセンターで売ってた物)
- 市販エサ(メダカなどの稚魚用ベビーフード。粉末タイプ)
- 冷水筒(1.6L品をダイソーで購入。200円の透明な品が丁度よい。できれば複数本)
- エアストーン(泡が荒い方が良いかも。ただしうるさい)
- エアチューブ・エアポンプ
- 大きめのスポイト
- 透明っぽいプラケース
- 懐中電灯
- 環境が安定したメイン水槽(60cm規格)
温度や光の管理については、汽水ボトルごとメイン水槽に浮かべる事で対応します。赤外線放射温度計は2000円程度の物で十分です。日々の水槽管理でも便利なのでついでに購入をオススメ。
冷水筒ではなくペットボトルでも良いかもしれませんが、楕円型のものだと60cm水槽に上手く引っ掛けることが出来ます。地味にお手軽ポイント。透明なら安物プラで十分でしょう。

エサに関しては、稚魚用の粉末フードで十分育てられます。エアー関係はどこのご家庭にもあるような適当セットで十分でしょう。ただし、分岐やバルブなどでエアー量を調整できるほうが望ましいです。
抱卵~脱卵~孵化
オスメスを複数匹飼いこんでいればそのうち抱卵するでしょう。オスメスの見分け方などもありますが…ショップで指定して購入させてくれるかどうかが問題ですね。オスメスが揃っている環境なら、そのうちメスの背中の卵巣が発達してくるのが観察出来るかと思います。こうなれば、そのうち抱卵するでしょう。ヒーターが入っている水槽で飼育していれば、真冬でも抱卵します。
孵化のタイミングは抱卵から3~4週目が目安とされていますが、2週間と少しくらいでも孵化が始まったことがあります。抱卵に気づいてから2週間くらいしたら、母エビの状態チェックを怠らないようにしましょう。
大体3週間くらいしたら、冷水筒にメイン水槽の飼育水を入れて母エビを隔離します。この時点では人工海水は使いません。エアストーンを入れて軽くエアレーションしながら数日様子を見てみましょう。タイミング次第ですが、だいたい翌日には孵化が始まっています。また、母エビからの脱卵もしているでしょう。母エビは完全に卵を投げ出したらメイン水槽に戻してあげます。
孵化後のゾエア期幼生は、2~3日以内に汽水環境に移す必要があります。最初の一回は、メイン水槽の飼育水に規定量の70%程度の人工海水の素を溶かして作った汽水を用いるのが良いかと思います。汽水を作ったらスポイトで移してあげましょう。なお、ゾエア期の間は光に集まる性質があるので、ライトを当ててあげるとスポイトで吸い上げやすいです。
脱卵した卵はカビさえしなければ孵化する可能性があります。強くエアレーションをかけて様子を見ましょう。経験的に、1週間位までにはだいたい孵化が終わるはずです。できれば毎日チェックして、こまめに孵化した幼生を汽水に移してあげます。カビが出始めたら終了。
一回の抱卵につき1.6Lの冷水筒1つでも生育させることは出来ますが、より確実に稚エビを育てたいなら2本分くらいに分けた方が良いでしょう。日々のお手入れが大変ですが…
ゾエア期初期

ゾエア期幼生を汽水ボトルに移したら、弱めのエアレーションをかけてメイン水槽に浮かべておきましょう。幼生がボトル全体をゆっくり回る位の強さが理想です。強すぎてグルグル回ってしまう状態では、幼生がエサを取ったり脱皮したりする際の妨げになる可能性があります。また弱すぎて幼生がボトルの下の方に溜まってしまうのもよくありません。ほどほどの強さでエアレーションしてあげましょう。
以降は基本的にやること自体はワンパターンです。つまり…
- エサやり(毎日1回。耳かき一杯程度)
- 撹拌(毎日数回)
- 水換え(できれば毎日~1日おき。面倒でも2日おき位で。毎回半分~7割を換水)
以上の繰り返しです。エサは最初に書いたとおり市販の稚魚用フードだけでOK。エサはそのうちボトルの底まで落ちてしまうので、毎日何度かかき混ぜてあげましょう。この時だけエアレーションを最強にしても良いですし、スポイトなどでかき混ぜても良いです。幼生がエサに接触できるチャンスを増やしてあげるのが目的。
水換えに用いる汽水は、カルキ抜きした水道水に人工海水の素を規定量の70%ほどを溶かして作ります。人工海水の素にはカルキ抜き成分が含まれている場合もありますが、あまり気にせずカルキ抜きした水道水を使ってOKです。
水換え自体はライトを当てればゾエア期幼生が寄ってくるので、頑張ってスポイトで別の容器に移し替えるだけです。多少食べ残しのエサなどが残っても構いません。
部屋の温度によっては幼生たちがいる汽水の水温が変わってしまうかと思いますが、急激な温度変化でないなら問題ないでしょう。よほど下がらない限り(20℃下回るようなら考慮が必要でしょうか)気にしなくても大丈夫です。新しい汽水を注ぎ込む前の水温を確認して、新しい汽水の温度調整をしっかり行ってください。あとは新しく作った70%汽水を注ぎ込めば水換え完了です。
ゾエア期後期

生育が上手くいっていれば、2週間位で明らかに大きくなってきます。また、3週間位すると全身が赤くなり、明らかに動きが早くなります。この頃にはスポイトで吸い上げようとすると逃げられたりもするでしょう。
この時期だからといってもやるべき作業は変わりませんが、水換えは「ボトル上層の上澄みを捨てる→ゾエアごと中層の水を新しいボトルに移す→最下層の食べ残しエサなどを捨てる」というやり方にすると楽です。もちろん、水を捨てる前は取り残したゾエアがいないかよく確認する必要がありますが…
着底

最終的に、おおよそ1ヶ月でゾエア期が終わり稚エビになります。尻尾を上にして水中に浮いているゾエア期とは明らかに動き方が異なり、エアストーンやチューブ、ボトル底につかまってジッとしていたり、水中を素早く泳ぐようになります。赤かった体色も親と同じく透明なグレーっぽい感じになります。こうなればいわゆる「着底」状態です。
ここまでくれば、あとは淡水にうつしても大丈夫です。徐々に塩濃度を下げて慣らしていく方法を推奨している方も多いですが、いきなり淡水に移動させてもあまり問題はありません。ただし、着底したてのまだ赤みがかった稚エビに関しては注意が必要です。まだ淡水に適応しきれないので、赤みがかった稚エビなどはしばらく汽水で育てましょう。
また、稚エビまで育ったとはいえ1cm程度のサイズでしかありません。メイン水槽にいきなり入れてしまうと、他の住人のオヤツになってしまう可能性が高いです。できれば別に小型水槽を準備してあげましょう。
淡水移動以降

以降は、サイズこそ小さいですが親エビと同じような飼育方法で問題ありません。エビ用エサでも良いですし、コリドラス用エサなどを与えてもしっかり食べてくれます。着底から1ヶ月くらいすれば、3cm程度まで育つでしょう。こうなれば、他の住人次第ですがメイン水槽に移動させても大丈夫でしょう。
ちなみに
この方法で、一番うまくいった場合におおよそ400匹以上が稚エビまで育ちました。エビのみの60cm水槽を立ち上げる必要があるかもしれませんね。


ある時の汽水卒業稚エビたち。この時の孵化・生育の結果、この写真と同じくらいの規模が4回は取れましたので…どう考えても400匹は超えてました。
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